研究室コラム

くらし+きかい=意欲的日々

自ら動かないロボットが、
福祉やスポーツ、
宇宙でも大活躍。

大学院 工学研究科
ロボティクス専攻
博士(工学) 教授 平田 泰久

人に寄り添う「非駆動型」ロボット

学生時代から、人と協調して物体を搬送するロボットの研究を行ってきました。その延長線上で、現在は「非駆動型」のロボット、つまり自分では動かないけれど、誰かが動かしてくれればいい働きをしますよ…そんなロボットをつくっています。

まず、歩行機や足こぎ車いすといった「高齢者や障がい者を助けるロボット」からお話ししましょう。ロボット研究者というものは、すぐに「ロボットにモーターをつけてパワーアシストを!」と考えたくなるのですが、この歩行支援ロボットを動かすのは、あくまでも人間。モーターがないので誤作動で勝手に走り出こともなく、安全性が確保しやすいというメリットがあります。モーターの代わりに後輪に取り付けた2つのブレーキを使って障害物にぶつからないように止まることもできますし、もっとコントロールすれば、決められた経路に従って使用者を誘導することも可能。基本的に人間が動かすので、消費電力も少なくて済みます。

もう一つの「足こぎ車いす」ロボットは、車輪の前につけたペダルを漕いで前進します。片足はもちろん、両足に障害がある方であっても漕ぐことができる画期的な車いすです。この事実は、歩くことができない方々の心に希望を生み出しました。それならば日常生活の活動範囲の拡大はもちろん障がい者スポーツにも応用できるかもしれないということで、移動性の向上を目指して改良に取り組んでいるところです。

見守ったり、教えたり、調べたりするロボット

歩行支援ロボットにはインターネットにつながって情報をやり取りするIoTの機能があります。歩いた場所や歩行速度の情報が常にサーバーに送られ、蓄積されるしくみになっています。このデータをAIを用いて解析することで、お年寄りの日々の状態を把握するといった見守りなどに利用できるでしょうし、将来、ビッグデータとして活用することができるかも知れません。

また、身体につけた小さな機械の振動によって、スポーツをするときの正しい手の位置、足の位置などを教えられないかという研究も進行中です。高齢者や障がい者の運動のサポートはもちろんのこと、健常者においても効果的なスポーツのトレーニングに利用できないかと考えています。

さらに「非駆動型」という考え方はそのままに、複数のロボットを用いて水上や水中を効率的に調査するといった、福祉とはまったく方向性の異なる研究も行っており、最終的には月の探査も目指したいと思っています…と、さまざまな研究をしている私ですが、正直、高校時代は勉強に対しては「非駆動型」でした。でも、東北大学で素晴らしい先生と研究テーマに出会うことができ、研究に関してはすっかり「駆動型」です。もちろん、きみにもそのチャンスがありますので、ぜひ東北大学で誰かの喜びにつながるような研究に取り組んでみませんか。