研究室コラム

くらし+きかい=見えないものが見えてくる

生物の明日を予測すると、
人と地球の豊かな
未来が見えてきます。

大学院 工学研究科 バイオロボティクス専攻
工学博士 教授 石川 拓司

「数字」で示す生物の将来

「機械」というと硬いとか、油があるようなものをイメージするかもしれません。でも、私が扱っているものはちょっと変わっていて、人間や微生物、藻類といった“生きもの”。生物の将来を予測しようという研究を行っています。

生物の将来が予測できると、どんなメリットがあるのでしょうか。例えば人間の身体の中の状態が予測できれば、このままでは病気になるとか、ここを手術すれば、どう治るといったことが分かったり、植物性プランクトンの動きが予測できれば、いつ・どこに・どれくらいの赤潮が発生するのかが分かるので、環境問題の解決や漁業、水産業の役に立つといった具合です。

これまで経験に頼っていた予測を「何%こうなります」と、数字で答えを出すことは工学の大切な役割であり、そのためには数式が必要です。そこで私たちは、実際の現象を観察して、どうしてこうなるのかを理解し、それを数式で表すということを行います。これを「数理モデル化」といいますが、この数式は大変複雑で人間の手では計算することができません。そこでスーパーコンピュータに解いてもらうわけです。これがシミュレーションの基本で、私たちの研究の要でもあるわけです。

分からないからおもしろい

私が最初に志したのは航空宇宙。特に風や空気、水といった流体に興味があり、ロケットや飛行機などの速い流れを研究したいと夢見て研究室に入りました。ところがある時、教授が私にいったのです。「この世界にまだないものをやりなさい」と。目の前に存在しないものをやれといわれても、興味の持ちようがない…と思いつつ、教授がバイオメカニクスの道を示唆してくださったこともあり、この分野を選択。血液の流れに関する研究からスタートして、現在も診断・治療に関わる研究を続けています。例えば、いまはまだ実現していない心臓のような臓器をつくる場合にも、この研究成果は欠かせないものとなるでしょう。

私が“機械でバイオをやる人”になっておよそ20年、分かってきたことがあります。それは、だれも見たことがない世界を進むのは、とてもおもしろいということ。そして、これからどうなるのか分からないところにこそ、若い君たちが主役になれる場があるということです。この予測は、あくまでも私の経験によるものですが、だいぶ高い確率で当たっていると思いますよ。