研究室コラム

くらし+きかい=自律

音波でつくるエンジンで
何ができる?高い自律性で
宇宙空間でも役立つはず!

大学院 工学研究科 機械機能創成専攻
工学博士 教授 琵琶 哲志

熱しやすく冷めやすい!?

エンジンと聞いたら、きみはピストンやタービンを思い浮かべるかもしれませんね。でも私たちが手がけているのは、ピストンを音波に置きかえた「音波エンジン」なんです。カタチは長さ数十センチのパイプ。それが「音波エンジン」のプロトタイプ。この内部には金網のようなものが充填してあり、加熱すると熱が空気の振動エネルギーに変換されて「ボー」という音が鳴ります。音の形で動力を取り出そうというのが「音波エンジン」です。

この音を先の方まで伝えたいときは、パイプを連結します。またパイプを楕円のような形につないで加熱すると、発生した音波はその中を回り続け、先の方では音が吸熱反応を起こして周囲から熱を奪います。つまり冷やすことができるので、熱駆動型の「音波クーラー」にもなるというわけです。

この「音波エンジン」は、しくみもつくりも、いたって単純。駆動部分もなければ特別な部品も必要ありません。壊れるところがない熱機関ですから、壊れては困る場所で役立つのではないかと思っています。例えばインフラがまったくない地域。誰でもつくったり、修理できたりするエンジンですから、技術者がいなくても継続して使うことができるでしょうし、そういう意味では自律した熱機関ともいえます。それから宇宙。ちょっと調子が悪いから直しに行ってくる…なんてことができないところで役立ちそうです。またロケットに搭載する場合でも、軽量なので負担になりませんし、太陽光を集光して加熱して、それで出た音で発電機を動かしてもいい。冷凍機を動かすことも原理的には可能だろうと思います。このように、いままで使われていなかったところでの使い道を探すのも、私たちの大切な役割なんです。

謎が多いからおもしろい

この「音波エンジン」の性能を高めるために、日夜、私たちは試行錯誤を繰り返しているわけですが、パイプの太さをこうすればいいとか、加熱する位置を変えてみたらいいんじゃないかとか、どうやら細部にわたってまじめに考えるだけではダメなようです。何しろ「音波エンジン」はカタチもしくみも単純なので、これまでも思いつきに近いような発想が研究の進展につながったことが少なくありませんでした。「まじめになりすぎない」ということにまじめに取り組むなんて、工学の話が哲学的な話になってしまいましたが、「音波エンジン」はまだまだ謎が多い分、おもしろいこともたくさん待っている気がしています。

*平成28年4月からこの新専攻名となる予定であり、変更する可能性があります。(専攻設置報告書提出中)