研究室コラム

くらし+きかい=ヘルスケア

ミクロな機械が切り拓く
次世代の医療と
新しいヘルスケア

大学院 医工学研究科 医工学専攻
医学・工学博士 医師 教授 芳賀 洋一

小さいからできる役に立つこと

きみが持っている携帯電話。持っている人が珍しかったころのそれは、とてもゴツくて重いものだったのを知っていますか。それがいまのように小型・軽量化、多機能化されるのに役に立ったのが微細加工技術です。「小さい」ことが、私たちのこれからの生活をもっと便利に快適に変えていくはず。そんな思いで私が開発しているのは、小さくても高性能で多機能な新しい医療機器です。

検査や治療、手術を行うときに体を大きく切り開かずに細い道具を体内に差し込んで検査をしたり、手術に匹敵する治療を行うことを低侵襲医療といいますが、これが私たちの研究テーマです。すでに内視鏡やカテーテルを使った低侵襲医療が広く行われていますが、私たちはこれらにマイクロセンサーや小さな運動素子などを用いた精密治療機器を組み込むことで、より安全で確実、そしていままではできなかったような新しい検査や治療を実現したいと思っているのです。

人の役に立ちたい

現在、私たちが手がけているものに太さ125ミクロンの光ファイバーの圧力センサーがあります。髪の毛が80から100ミクロンの太さですから、細い血管の中に入れて血圧を測ることも容易にできるわけです。この圧力センサーは、MEMS※を使った世の中で最も小さい圧力センサーだと思います。

それから内視鏡の先端に装着する円筒形のフードに運動素子を組み込んで、開口径を変えられるタイプのものを開発しました。鉗子や電気メスを用いた内視鏡治療の際、切り広げていく患部の大きさに合わせて開口径が変えられ、さらに、組織を持ち上げて手術を助けることができ、内視鏡をいちいち出し入れして取り替える必要がなく、患者さんはもとより、医師の負担も軽減できます。さらに体に貼り付けて乳酸や血糖などさまざまな生体情報を測ってヘルスケア(健康管理)をサポートするウェアラブルな機器も開発中で、今後は収集したデータをネットワーク上で蓄積・分析、ビッグデータとしてユーザーや医療従事者への有用な情報提供とフィードバックができるようにしたいと思っています。

最後に、私が医工学の道を進むことになった経緯をお話しします。水泳部とバンカラな応援団を両立(?)した高校時代を経て、外科の開業医であった父の後を継ごうと東北大学の医学部に入学しました。卒業後は医師として病院にも勤務したのですが、そのころに発展してきた低侵襲医療に興味をもって、いっそのこと役立つ機械を自分で作りたいと考えてしまいました。それで工学部に飛び込んで工学の勉強をしながら開発を始めたわけです。実は私の父は工学部を経て医者になったので、私はその逆を行ったことになりますが、「人の役に立ちたい」という思いは、父も私も同じです。