研究室コラム

くらし+きかい=夢が広がる

動く生物も止まって見える
「顕微鏡ロボット」で、
ワクワクな未来にロックオン!

大学院 情報科学研究科 システム情報科学専攻/
工学部 機械知能・航空工学科
工学博士 教授 橋本 浩一

動くものが止まって見える

豪快なホームランを放ったプロ野球選手なら「ボールが止まって見えたんです」といえるのかもしれませんが、ほとんどの人間には、高速で動くものが止まって見えることはありません。しかし、私たちがつくるロボットなら可能です。私はデジタルカメラをはじめ、プロジェクタ、加速度計などのセンサを使って「ロボットを動かす」だけでなく、「生きものを動かす」という研究をしています。例えば、カメラなどのセンサをロボットの制御や生産システムの設計に用いることで、さまざまな対象の組み立てや目視検査の実施が可能になります。また、ロボットの手の先(先端)に取り付けられたカメラで取得した「いまの画像」を、「望ましい画像」に一致するよう、ロボットを制御するといったこともできるわけです。

医学や生物学、化学の分野で不可欠な光学顕微鏡に対しても、ロボット技術は重要な役割を果たしています。私たちがつくる顕微鏡ロボットなら、高速運動するターゲットを追跡し、顕微鏡の視野内に留め続けることができます。現在のおもなターゲットである動く生物や細胞の重心位置を計算し、重心が画像中心に近づくように、顕微鏡のステージを制御。実験によく使われる線虫やゼブラフィッシュなどがチョロチョロと動き回っても、常にそれらを対物レンズの下に留めることができるので、観察を続けることができるわけです。遺伝子組み換えの技術などを使って、動物の神経系や筋肉系の動作原理の解明にまい進する大学や企業の研究者が、私たちのつくった顕微鏡とカメラ、プロジェクタを使って、研究がやりやすくなったとか、生きものが何を感じて、どう判断して、どう行動するのかを精密に計測できるようになったと喜んでくださるのが、私たちの喜びでもあります。

「工学」はワクを超えて

工学部では、実にさまざまなことを勉強します。私も生粋の工学部出身者ですが、現在は生きものについて学んだり、神経の話をしたり、遺伝子組み換えにも関わっているのが現実です。もし、きみがロボットについて学んだとしたら、その知識と技術は自動車の自動運転に使われるかもしれないし、病気やケガの治療に使われるかもしれません。可能性は無限大です。ぜひ、工学部で自分が好きなことを勉強してください。その先には、ワクワクするような未来が待っているはずです。だから、いまのうちに工学に必要な基礎体力を鍛えるつもりで、数学と物理をきちんと勉強しておいてくださいね。