研究室コラム

くらし+きかい=低炭素社会

不可能を可能に!
カギはトライボロジーが
にぎっています。

大学院 工学研究科 ナノメカニクス専攻
工学博士 教授 足立 幸志

摩擦のしわざに気づいたら

私が幼いころには、いまのように「水を買う」なんて考えもしませんでした。健康志向が高まり、水道の水を飲むというあたり前のことがあたり前でなくなると、それは製品になります。私たちの研究の分野もそれと似ていて、身の周りにたくさん存在するのに、普段はまったく気にしていないもの。例えば、君にコマまわしの経験があっても、「コマが止まったのは摩擦のしわざだな」とは考えなかったでしょう(考えていたらすばらしい!)。そう、私たちの研究対象はトライボロジー(Tribology)。摩擦や摩耗現象を解明しながら、それらを制御するための技術を追究しています。

機械で生じる摩擦や摩耗を変えることができたら、世の中もガラリと変わる可能性があります。なぜなら、あらゆる機械の信頼性や耐久性、エネルギーとコストの損失、性能の限界は多くの場合、機械に存在する数多くの接触部の摩擦と摩耗に支配されているから。不可能を可能にする機械を生みだすカギは、トライボロジーがにぎっているといってもいいでしょう。

“いいことづくし”の技術

例えば自動車の場合、摩擦に起因する動力損失は全エネルギー損失の30〜40%に達するといわれています。自動車の中の摩擦や摩耗は減らしつつ、タイヤはできるだけ減らないものを考える。それが耐久性、安全性や快適性を向上させるだけでなく、燃費がよくなることで低炭素社会の実現にも貢献します。トライボロジーがもたらす発展はいいことづくし。だから私は好きになったのですが。

これまで、私たちの研究室では機械に使っている潤滑油を「水」に変えることができそうだとか、カーボン系のコーティングに不活性ガスを吹き付けたり温めたりするだけで摩擦が下がるとか、表面をナノオーダーで加工すると性能が10倍もよくなるといった現象を発見してきました。そのような現象を解明しながら、医療機器・宇宙機器や精密機器での利用を視野に入れた研究も行っています。

このように関係するフィールドが広範囲に及ぶので、さまざまな分野の専門家の力を借りています。教えてもらうことも多いですし、議論することもあります。ですから、うちの研究室にいると、自然にコミュニケーション能力が養われるんです。

決して目立たないけれど、深く入り込めば世の中を変えるようなことができる。これは、なかなか魅力的な世界だと私は思っているのですが、君はどうですか。