研究室コラム

くらし+きかい=命を見つける

人の命を救う。そんな夢を
実現するレスキューロボットは、
“鉄腕アトム”でなくていい。

大学院 情報科学研究科 応用情報科学専攻
工学博士 教授 田所 諭

被災地の情報収集に力を発揮

君は「ロボット」と聞いて、何をイメージしますか?一緒に遊んでくれるペット型か、それともダンスも踊れる二足歩行ロボットでしょうか。ひと口にロボットといってもその種類は様々。私は以前、"人と仲良く仕事をするロボット"の研究をしていました。でも15年前にその対象を変えたのです。災害などの被災地で、人命を救うために活躍するレスキューロボットに。

1995年1月17日、私は阪神・淡路大震災を体験しました。当時も、そして現在も被災地で人命救助に当たる隊員の方々が口を揃えて言うのは、「人命救助にまず必要なのは情報収集である」ということです。被災地には建物が崩れたり、二次災害の恐れがあって人間が近づくことができない場所があります。そこで人間の代わりに、がれきの中に潜り込んでいって人を探したり、被害状況の調査を迅速に行うことができるレスキューロボットの実用化が急がれているのです。

チーム“人間&ロボット&犬”…etc.

いま、実績を上げているレスキューロボットは、私たちが開発した「能動スコープカメラ」で、蛇のように細長い形をしています。特徴は、ボディに斜めに植え込んだ毛を振動させることで、自走できる点にあります。がれきの奥深くまで入り込み、下敷きになってしまった人を探し出すことができるわけです。これはレスキューロボットの国際的なデモ体験・試験が行われた際に、現役の消防隊員たちから「災害現場への導入の可能性が最も高いロボットである」と高い評価をいただいたんですよ。

実は災害現場では、ロボットは鉄腕アトムのように自分で考えて行動してくれなくてもいいんです。なぜなら人間の方がはるかに判断能力が高いから。人が優れているところは人が担当し、ロボットが優れているところはロボットがやる。犬が優れているところは災害救助犬に任せるということで、それぞれの役割を果たすものたちが一体となってチームを組み、迅速に、効果的に「人の命を助ける」という目的を果たすことが大切なんですね。

レスキューロボットの研究開発は、日本だけでなく、アメリカでも15年前に始まったばかり。もし、君がこれに興味を持ち、私の研究室のドアをたたいてくれたなら、レスキューロボットの成果が見られる一番面白い時期に立ち会うことになるでしょう。工学とは基本的には人の役に立つものをつくるためのものです。それもロボットを使って「人の命を助ける」という夢が実現できたら、私はこれほどすばらしいことはないと思っています。

今度はぜひ、君の夢を聞かせてください。