研究室コラム

くらし+きかい=うまい

低炭素社会なんて
パスタのアルデンテに
比べれば簡単だ

大学院 工学研究科 技術社会システム専攻
工学博士 教授 中田 俊彦

熱の達人は料理も美味い

パスタはアルデンテがもっともおいしく感じられる状態だといわれていますね。アルデンテはパスタの中央にわずかに芯が残っていて、歯ごたえのあるゆで加減のことですが、では君がパスタをアルデンテにゆでるとしたら、どこで火を止めますか?だいたいのゆで時間はパッケージに書いてあるので、それに従えばいいのですが、個人的には表示時間の30秒くらい前に火を止めるのがいいんじゃないかと思っています。実はこのアルデンテのメカニズム、僕の専門である伝熱学がベースになっているんですよ。授業の中では難しい微分方程式が出てきたりするわけですが、それを使えば、パスタをもっとうまくゆでられるようになるかもしれないですね。

僕は田舎育ちなので、天然の空気と水に囲まれて、社宅周りのタバコ畑と材木置き場が放課後の絶好の遊び場でした。転勤で引っ越した都会で目にしみた光化学スモッグ、薬品臭いぬるい水道水、高速道路の騒音は、都会に来た幻想をすぐに打ち砕き、心は生まれ育った丹沢の麓に戻りました。

エネルギーの達人は生活も上手い

環境問題への興味は、都会での公害体験がきっかけです。大学の機械工学科で学んだ熱や燃焼の理解を基礎にして、現在ではエネルギーシステムの研究に取り組んでいます。太陽光や風力などの自然エネルギーに、石炭やガスなどの化石燃料などを組み合わせて、生活に必要な熱エネルギーや電力を安定して使える仕組みを考えています。天然資源からエネルギーに変える技術だけでなく、二酸化炭素の排出量、将来の世代まで負担する費用など、経済性も重要です。物理や化学分野の方程式に、単位や次元の異なる制約を加えて、望ましい未来の低炭素社会の姿を得ようと悪戦苦闘しています。

こんなとき、研究室の窓から奥羽山脈へと続く原生林を望みながら、未来の暮らしを頭に浮かべます。バイオマス燃料を使って自動車が走り航空機が飛ぶ風景、住まいがエネルギーの供給源として働くエコ住宅の情景。子供たちに大人の暮らしぶりを自慢できるようになりたいし、エネルギーを巧く使えればライフスタイルが上手くなるのだと身をもって示したいです。受験では偏差値に縛られるかもしれないけれど、その先には最先端のコト・モノがたくさんあって、一方では昔ながらの不思議でおもしろい世界が待っている…それが東北大です。

近い将来、君がワンダーランド・東北大の扉を開けてくれることを楽しみに待っています。