研究室コラム

くらし+きかい=自分の動きを知る

人間の「無意識」の領域は偉大、
メカニズムを解明して、
人間のように振る舞える
ロボットを。

大学院 工学研究科 ロボティクス専攻
工学博士 教授 林部 充宏

ロボットとリハビリ

この研究室では、“人間の動きを知る”ためにロボティクスを活用しようとしています。ロボティクスでは運動を生成したり、制御したりするためにさまざまなツールがつくられていますが、それを 人間の動きに適用すると、例えば、歩くときのバランスや安定性の良し悪しを判定するツールとしても使えるようになります。ケガや病気で、思うように歩けなくなった人のリハビリテーションに 応用すれば、その人がどれくらい歩けるのかを評価したり、歩ける ようになるための方法を推察することにも使えるのではないかと考えています。そのためには人間のもつ環境適応のしくみや、運動学習能力を、工学的にも脳科学的にも深く理解しなければなりません。人はどのようにして運動を制御したり、学習したりしているのか。そのメカニズムを解明することができれば、人間のように振る舞うことのできるロボットをつくることができそうです。その結果、理学療法士のような専門家のもとで行われていたリハビリが、ある部分はロボットに任せることができたり、より質の高いリハビリができるようになる可能性もあります。この超高齢社会で、ロボットが健康寿命を延ばす一翼を担えるかもしれません。

双方向的に科学する研究室

最近、何かと話題のAI。「人間の仕事がAIにとってかわる日がやってくる」などと言われることもありますが、人間が何気なく行っていることを、同じようにAIにやってもらうことは、現段階ではできていません。人間は自分の経験に基づいて予測して環境適応し、効率的に動くことができます。ここが人間と機械の異なる点のひとつで、私の研究室では、人間のようにエネルギー効率の良い運動制御ができないものかと、日夜研究しているのです。人間を知るためにロボティクスを使い、ロボティクスを向上させるために人間の学習能力の研究を行う。そんな双方向的に科学する研究室には、外国人の学生もたくさんいます。ロボティクスだけでなく、英語の勉強もできるかも...と思った意欲的な学生に会えるのを、楽しみにしています。