研究室コラム

くらし+きかい=ここちいい?

ポン!とボタンを押すだけで、
飛行機だって、自宅でつくれる。
そんな日が来るかもしれませんよ。

大学院 工学研究科 航空宇宙工学専攻
博士(工学) 教授 岡部 朋永

自宅で飛行機が作れる日!?

コンピュータの中で、原子といった小さなものをつみあげて飛行機のような大きなものをつくったり、その安全性を確かめたり、壊したり(!!)するのが私たちの研究室の研究です。このコンピュータの中での“ものづくり+ものこわし”は、世界的に注目を集める取り組みで、国から補助を受けて研究をしています。また、ボーイングの人たちを呼んで、アメリカ国内にて会議をし、意見交換をするなど幅広く活動をしています。

コンピュータの中で“ものづくり+ものこわし”とひと口にいっても、いろいろな取り組み方があります。私たちが力を入れているのは、軽くてしかも強い、複合材料を積極的に利用することです。これを旅客機や自動車に使うことで、すごく軽くなるので、燃費をよくしたり、CO₂の排出量を減らしたりすることが出来ます。そこで、日々、コンピュータの中で複合材料からなる飛行機を作ったり、壊したりしています。

複合材料の今後の課題は開発が進んできた3Dプリンタが使えるようになるか、ということです。3Dプリンタは“ものづくり”の世界に起きた革命です。3Dプリンタの原料に複合材料が使えるようになれば、自宅でポン!とボタンを押すだけで、冷蔵庫やバイク、自動車、自家用飛行機だって出来てしまいます。そんな日がやってくるかもしれませんよ。

デザインと機能のいい関係

現在の興味は “デザイン”に向いています。よい性能のものをつくったからといって、必ずしも売れるとは限りません。建築だけでなくあらゆる商品で、機能以外の「デザイン性」が求められているのは良く知られていることです。飛行機もたぶん同じ。でも、なにを美しいと感じるかは人それぞれ。自分の家を建てるときに建築家さんとよく相談するように、飛行機だって自分好みの形が良い。ただし、何通りもの飛行機を実際につくってみるわけにはいきません。でも、コンピュータの中でなら、それがカンタンにできます。飛行機の性能とデザインにはどんな関係があるのでしょうか?美しさと操縦性は比例するのでしょうか。おおいに興味があります。

大学に入る前は、新聞記者になりたいと思っていました。しかし、父に「就職に困るぞ」といわれ、しぶしぶ工学部に入りました。実は、いまでもかなりの機械音痴です。新しいパソコンを買うと、最初の設定を周りの人に頼んでやってもらっている始末です。そんな状況ですが、工学の世界で何とか生きのびることができています。それほど向いているとは思えない自分が何とかやれているのは、とにかく「興味」のあることを見つけて取り組むようにしているからだと思います。皆さんには、東北大学の工学部で、ご自身にあった「興味」を見つけてほしいと思っています。