研究室コラム

くらし+きかい=自由な光

さまざまな光の波長を
同時に制御するデザイン、
可能にするのはメタマテリアルです。

大学院 工学研究科 ロボティクス専攻
博士(工学) 教授 金森 義明

透明マントは夢じゃない

この研究室は、ナノフォトニクス(ナノスケールの物質と光との相互作用を研究する光学)とメタマテリアル(サブ波長構造の人工光学材質)がキーワード。光を自在に制御し、微小機械と融合することで、新しい光の材料をつくろうとしています。いま、私たちは自然界にある限られたものをうまく組み合わせて使いこなしていますが、光の屈折率を自在に調整することができれば、透明人間になれるマントだって理論上はつくることが可能です。これは、ドラえもんの秘密道具が実現できるだけでなく、スマホの電波が届かないところにも電波を迂回させて届かせるとか、自動車の死角をなくすなど、とても魅力的な応用が考えられる研究なのです。

もう少し身近なところでは、夏、駐車場に置かれた自動車の車内は温度が上昇し、中は蒸し風呂のようになります。ポイントは窓。可視光の波長はそのままに、熱の波長だけを反射するような機能を持たせた新しいガラスをつくることができれば、子どもの閉じ込め事故などの課題を解決する一助になるでしょう。

進化と淘汰の結果を模倣

もう一つ、バイオミメティクス(生物機能模倣)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。私たちは蛾の眼に注目して、その構造や機能を模倣、光の反射を防止する技術を開発しました。それは一眼レフカメラのレンズに採用され、光が生み出すノイズの問題を取り除く働きをしています。また、モルフォ蝶の羽根は鮮やかなブルーですが、その色はナノ格子が発生する「構造色」です。光が反射したときに人間の眼に届く色だけが「色」となって見えているのですが、この不思議な構造を模倣することで、例えば、信号機のように「このときは赤にしたい」というニーズに応えることができるようになれば、まさに「光を自在に制御する」ことになります。このような技術が医療や福祉、環境やエネルギー、情報といった幅広い分野の課題解決に寄与するお話がしたかったのですが、時間が来てしまいました。この続きは、ぜひ研究室でお話ししたいと思います。