研究室コラム

くらし+きかい=穏やか

スマートな環境への配慮を
自分たちも実験台になって、
日々、探っています。

大学院 工学部研究科 技術社会システム専攻
博士(工学) 教授 中田 俊彦

「木」でやさしく

「お洒落なカフェみたい」。これが、わが研究室を訪れた人たちの第一声です。檜の柱が立っている研究室はここぐらいですから、そう言いたくなる気持ちはとてもわかります。ただ、これもれっきとした実験です。この研究室における「木の内装プロジェクト」は、10年ほど前に大きな檜の丸テーブルを置いたところから始まりました。学生諸君の机も、床も本棚も木製のものに変えて、やっと一段落といったところです。「なぜ内装を木に変えたか」ですって?空調が優しくなるからです。木は梅雨時の湿気を吸い取ってくれるし、冬場は極端に乾燥しない。換気扇も稼働させているので、人いきれがこもらず、頭も冴えて研究に集中できる。木に囲まれていると、人間が本来持っている動物としての生態的な活動が高まり、ストレスが軽減できるのではないかと感じるからです。私自身、木に興味を持つなんて考えてもいませんでした。実は「自分が意識していない自分」というものがあって、それが本来の自分なのかもしれません。

世界のニーズにフィット

きみは国連のSDGs、「持続可能な開発目標」をご存じでしょうか。持続可能な世界を実現するために17のゴールが設定されており、論理的に社会や環境、資源など、単位の異なるものを混ぜ込んで、最適で価値のある組み合わせを生み出す方法を考えています。私はこの17のゴールの中で、クリーンエネルギーとサステナブルシティに関する研究を行っています。工学部ですから、インダストリーイノベーション&インフラストラクチャー、リサイクルなど、責任ある消費と生産、製造といったことにも関わっています。それを東北大学の機械系流にブレークダウンして教育したり、研究したりしているわけです。ただ、私はSDGsができるずっと前から、これらの研究に着手していましたので、「自分だけの研究」と思っていたことが、世界が重要であると思っているSDGsにフィットしたことで、ちょっと得した感じがしている今日このごろです。自分の家や研究室で実験し、その結果が実感とデータという形で手に入ると、ますます新たな興味が湧いてくるのです。私の毎日は、そうやって広がり、楽しさも増しています。