研究室コラム

くらし+きかい=極限まで見る

インターネットでつながる社会、
キーテクノロジーは
「センサ」です。

大学院 工学研究科 機械機能創成専攻
博士(工学) 教授 小野 崇人

見えないモノが見えてくる

あるとき、私たちの研究室に一人の生物学者から「細胞1個の熱を測りたいんだけど」との相談が舞い込みました。結果として、原理的にもオリジナルな世界最高の振動型熱量センサを完成させ、これまでカタマリでしか測ることができなかった細胞1個の熱を測定することを可能にしたのです。そのセンサで測定するのは、年齢と共に減少し、生活習慣病を引き起こす可能性がある「褐色脂肪細胞」。このセンサは、それまで世の中に存在したセンサのなんと1,000倍の感度なのです!いままで見えなかったモノが見えることで、私たちの健康に寄与する、新たな発見がなされるかも知れません。近い将来、朗報を聞くのが楽しみです。

これはほんの一例ですが、この研究室ではナノテクノロジーやマイクロシステム技術を基盤として、ITや医療、エネルギー、環境、ナノサイエンスのための微少機械を開発したり、極限の感度を目指した「極限センサ」を開発しています。また、センサを動かすには電気が必要ですが、そのための発電の技術も開発しているのです。ユニークでおもしろいものが多いのですが、今日は時間が限られていますので、次の機会にお話ししましょう。

小さいことのメリット

いまは「情報」とさまざまな「モノ」がつながる時代といわれ、自動車や建築、農業など、これまではあまりエレクトロニクスが使われなかった分野でも、情報化、エレクトロニクス化が進んでいます。基本的に、センサを使って情報を集めて、それをインターネットに送り、クラウドと呼ばれる情報空間でビッグデータ化して、私たちの暮らしに役立てようとしているのは、きみも聞いたことがあるでしょう。このようなIoT=モノがインターネットにつながる社会のキーテクノロジーの1つがセンサで、将来、1兆のセンサが世界中で使われる時代が来るとも言われています。

人の健康状態を知るセンサも、工場などの環境を監視するセンサも、小さければ少ない電力で高速に動くことができます。小さいことのメリットはたくさんありますが、良いアイデアが思いついても、実現するノウハウがなければカタチにすることはできません。それができるのは、ここが東北大学だから。これまで積み上げてきた世界トップレベルの機械の微細加工技術があるからです。だからこそ、ものづくりが好きな人に来てほしい。そして、私たちと新しいモノを生み出しましょう。