研究室コラム

くらし+きかい=新しい出会い

手をつなぐ相手を変えると、
表情も、性格も変わる。材料と
人間の共通点かもしれません。

大学院 工学研究科 ファインメカニクス専攻
工学研究科附属先端材料強度科学研究センター センター長
工学博士 教授 三浦 英生

研究のその先にあるものは

学生たちに「お味噌は何からできていますか」と質問すると、関東や東北の学生は「大豆に決まっているじゃないですか」と答えます。でも、九州で同じ質問をしたら、きっと「麦」と答えます。常識だと思っていたことが、実はそうではないことを教えてくれるのは、「大豆」で共感し合った人以外の人。まだ見ぬ誰かと手をつないでみると、今まで見えなかった世界が見えてきそうです。

もう一つ、私がよく学生たちに話すのは「余暇時間も充実させましょう」ということ。例えば、毎年5月に行われる大運動会では、学生たちは全力で優勝を勝ち取りにいきます。運動が得意な人は苦手な人をフォローし、作戦を立てて練習を重ねます。結果、当研究室のチームは、毎年、優秀な成績を修めています。工学部では、直接、人間を対象に研究をすることはほとんどありません。しかし、独りよがりな考えでは、世の中から求められるものは創りだせないのです。研究のその先にいる人々のことを考えて、目標を達成するための計画を立てて努力し、ときには協力し合う必要があります。余暇時間を充実させるのも、将来の社会に役立つ研究に挑戦するためには必要なことなのです。

大学で“タフさ”を身につけて

ダイヤモンドは、炭素という原子が並んでできています。ただ、炭素も手のつなぎ方が変わると、鉛筆の黒鉛になります。また、ダイヤモンドは電気を流しませんが、黒鉛は流します。どちらも炭素でしか成り立っていないのに、手のつなぎ方を少し変えただけで、見た目も性質も変わってしまうのです。「急に何を言い出すの?」と思ったかも知れませんね。実は私の研究室のテーマは、原子の手のつなぎ方の組み合わせを上手に変えることによって、強くて長持ちのする、信頼できる新しい材料を生み出すことなのです。複数の原子を組み合わせるのですから、これがなかなか難しいのですが、無限の組み合わせがあるからこそ、実に面白いのです。

この研究が、どんなことに役立つのかをお話ししたかったのですが、どうやら時間が来たようです。あなたがもし、進路に迷っているなら、とりあえず工学部機械知能•航空工学科に来てみてください。さまざまな研究や、世界中から来ている学生、先生たちとの触れ合い、経験を通し、誰とどのように手をつなげばよいのか、人と工学との関わりなどがわかってくると思います。そうすれば、あなたが追究したいと思うテーマが見えてくるかもしれません。そして、そのころにはきっと、今よりもタフな人になっていると思います。