研究室コラム

くらし+きかい=快適を身近に

大きな夢をかなえるのは、
小さい部品をつくる技術「MEMS」
人間と機械を快適につなぎます。

大学院 工学研究科 ロボティクス専攻
工学博士 教授 田中 秀治

「小さい=安い=いろいろ使える」というハイテク

私が手がけているのは、人間と機械とを自然に、快適につなぐMEMS(メムス:Micro Electro Mechanical Systems)という小さな部品の技術です。例えば、きみのスマートフォンの中にもMEMSがたくさん使われています。カメラの手ぶれ補正やナビゲーション機能、これらはジャイロというセンサの働きによります。かつてジャイロは大変高価なものでしたので、航空機や船舶などにしか使われなかったのですが、MEMSの技術でググッと小さく、桁違いに安くできたことで、いまはスマートフォンをはじめ、カーナビゲーション、テレビゲーム、ドローンにいたるまで、さまざまなものに使われるようになりました。米粒ぐらいに小さくして、一度にたくさんつくることで、安くもつくれる。まさにハイテクなのです。

さまざまな部品を小さく安くしたことで、あんなものにもこんなものにも使ってみようとなり、その用途は私たち研究者の想像を鮮やかに超えていきました。だから、私たちの技術は実用化することが大切です。この研究室には、毎日のように異なる企業の方々が新技術開発の相談や打合せに訪れます。また研究室のメンバーには、企業から研究しに来ている人たちもいます。年齢も上は70歳代の人までいるんですよ。年齢も経験値も国籍も多彩ですから、研究の視点も自然に広がっていき、世の中のニーズも捉えやすくなるわけです。それがこの研究室のすごくよいところでもあります。

在学中に「ものづくり」ができる!

これからは介護用ロボットのような人間と共存する次世代ロボットのための触覚センサやジャイロ、情報通信や無線センサの要となる周波数選択・制御デバイスの開発に、ますますMEMSの技術が重要性を増していくでしょう。このような少し先の研究でも、学生諸君はゼロからMEMSのセンサやデバイスを設計し、自らクリーンルームに入ってつくり、できたものを測定機器で測って製造評価までできるんです。それが東北大学です。自分の手の上でハンドルできるサイズであること、その環境が大学にあることで、一連のエンジニアリングが体験できる。このことは、かなり魅力的だと私は思うのです。

私の研究室には自動車でもバイクでもよいので、“マニア”に来てほしいなと思っています。なぜなら「こだわり」を持っているから。研究にも「こだわり」は必要で、小さな「こだわり」が結果に大きな差を生むことがあります。もちろん私も研究以外に好きなもの、こだわりのあるものがあります。そのお話は、また今度。

※MEMS…メムス:Micro Electro Mechanical Systems/微小電気機械システム:半導体微細加工技術を発展させた、小さく精密な機械を作る技術です。