研究室コラム

くらし+きかい=感動

あの日のライト兄弟のように、
新世紀に生きる僕たちは
新しい航空の世界を築こう!

大学院 工学研究科 航空宇宙工学専攻
工学博士 教授 浅井 圭介

飛行機が日本の産業になる!

きみも知っているライト兄弟が、初飛行に成功したのは1903年12月17日。僕はその85年後の同じ日、彼らの初飛行の瞬間を写真におさめたジョン・T・ダニエルズ氏の娘、マリエルさんという方にアメリカでお会いしました。そこで僕が感じたのは、飛行機の進化のすさまじさ。歴史の証人が目の前にいるということは、ライト兄弟が空を飛んでから、そんなに日が経っていないということ。それなのに、人類はスペースシャトルに乗って宇宙まで飛んで行ってしまったのですから。新世紀に生きる僕たちは、その進化のスピードとチャレンジ精神を受け継ぎ、新しい航空機の世界を築かなければなりません。日本でも、国内企業が小型ジェット機(MRJ)やビジネスジェット機(ホンダジェット)を実現しています。日本にも飛行機を産業として見る気運が高まってきているいまこそ、僕たちの技術を生かすときだと思うのです。

空気を光(色)で見る

僕たちの研究室では、低炭素社会に対応する地球にやさしい航空機から惑星探査用の飛行機まで、さまざまな用途の航空機を実現するために、実験空気力学の技術を生かして空気の流れを測る技術と、空気の流れをつくる技術の研究に取り組んでいます。その手段として重視しているのが風洞実験。風洞とは人工的に風をつくり出す装置で、中に飛行機の縮尺模型などを入れて飛行にかかわる流体現象を明らかにしようと日々、奮闘しています。

問題は、空気は目に見えないということ。それを見えるようにしようと僕たちが開発したのが、圧力や温度の変化が光り方の強さに変わる感圧・感温塗料。これを機体の模型の表面に塗り、時間的に次々変化する流れを塗料の光り方の強さ、いい換えれば「色」で見ようとしているのです。また物体を磁気の力で空中に浮かせて、その周りでどんな流れが起こっているのかを詳細に調べることができる磁力支持天秤もつくってしまいました。物体が空中に浮いている姿は、まるでマジックのよう。こんな世界的にもユニークな実験技術を、僕たちが確立しようとしています。

マリエルさんは僕にこんな話をしてくれました。「あの日、お父さんは家のドアをバーンと開けて入ってきて “They flew!They flew!”(彼らは飛んだぞ!)といったんです。私は5歳でしたが、その光景をよく覚えています」と。空を飛ぶことに挑戦し続けたライト兄弟のように、僕たちの研究も机上から機上へと生かせるよう、発展させていきたいと思っています。