研究室コラム

くらし+きかい=ドライでやさしい

壊さずに、やさしく
機械を検査・評価する技術は、
人間にも応用できるかも!?

大学院 工学研究科 ファインメカニクス専攻
博士(工学) 教授 燈明 泰成

薄い膜がカギ

日々、材料システムを壊すことなく、その健全性を調べたり、新しい検査手法を考えたりしています。材料システムとは、例えば金属の棒からは凝った肩をたたいてほぐすなどしか使い道がすぐに思い浮かびませんが、そのような素材から作られる電子パッケージなどから携帯電話を作製すれば、通話という機能が生まれます。このように、さまざまな素材から構成され、機能をなすものを材料システムとよんでいます。この材料システムの健康状態は、例えば超音波を使って検査します。私たちが病院で受けるエコー検査と同じです。ただ人間の体とは異なり、工業製品は硬くて超音波プローブを密着させることが困難なので、通常は製品を水没さないと検査ができません。でも水没が電子部品にとって良くないことは明らかですよね。そこで、私たちは水と製品との間に薄い膜を入れて真空ポンプで膜を製品に吸着させ、製品を水に触れさせない超音波検査技術を開発しました。また、電流を使って直径1ミクロン未満の2本の金属の細線を溶接したり、溶接した部分の寸法を測る検査も行っています。このような研究を通して、微細な材料の性質を精度よく測れるようになり、例えば約100ミクロンの人間の髪の毛の状態を調べることも、私たちにとっては難しいことではなくなりました。将来的に、髪の毛や爪から人間の健康状態を調べることが可能になるかもしれません。切った髪の毛や爪なら、なにをされても痛くないですからね。

きみにとっての「いいもの」

子ども時代、私は自然豊かな環境の中で育ちました。そんな少年の心をわしづかみにしたのが、世界各地を転戦するカーレース、F1です。漠然と「こんな自動車をつくるエンジニアになれたら」と機械工学に興味を持ちました。勉強は楽しいことばかりではありませんが、目標がなく勉強するのはしんどいと思うので、F1に出会えて良かったと思います。きみもこれから歩む道を考えるのなら、まずは好きなことを見つけて、大学に入ってたくさん知識を吸収してから具体的に決めるのも良いかもしれません。そして、できればいろいろな研究をしている先生がいる東北大学機械系を選んでください。きみにとっての「いいもの」が、きっと見つかると思います。