研究室コラム

くらし+きかい=長く使える

「壊れる」メカニズムを知り、
長寿命で
機能的な「表面」を創造。

大学院 工学研究科 機械機能創成専攻
博士(工学) 教授 小川 和洋

寂しいからさびる

工学部はモノをつくるところですが、良いモノをつくるためには、「壊れる」メカニズムを知ることも重要です。機械も人間と同じでどんどん劣化していくので、それを抑えることで見た目を良くして長寿命化するとか、新しいモノをつくることにつなげていく。私たちは、そんな研究を行っています。

ロケットもロボットも、モノの表面は時間が経つとさびてきます。それも材料の中からさびるということはなく、表面がさびるのです。中の方はしっかりとスクラムを組んでいるのでなかなかさびないのですが、表面は誰とも手をつなげない寂しい状態なので、何かと結びついて安定しようとする。それがさびる原因です。そこで表面に1枚、皮膜をつくって(「コーティング」といいます)さびないようにしてあげるとか、摩擦でどんどん削れていくようなものには硬い膜をつくり、すり減らないようにする方法を考えているわけです。

壁という壁を電池に

最近は高効率化をテーマに、火力発電所における地球温暖化ガスの発生を抑えようと、燃焼温度を上げて効率を良くするために新しい材料をつくる、あるいは高い燃焼温度にも耐えうるコーティングで、高効率化に貢献することを目指しています。また発電関係では、太陽光発電をつくっているのですが、いまある建物の外壁などにスプレーで材料を吹きつけて、壁を電池にしてしまおうという試みも行っているんです。うまくいけば、世の中の壁という壁、屋根という屋根が電池になるかも知れない。そんなことができれば良いなと思っています。

実はいまご紹介したような研究テーマに出会えたのは、私が学生時代、研究室の配属を決めるジャンケンに負けたからなのかも知れないのです。負けて進んだこの道ですが、興味をひかれるものにたくさん出会うことができました。きみもモノづくりが好きなら、この機械系できっと新しい発見ができると思います。何しろ、さまざまな分野の専門家の先生がいるのですから、わからないことがあれば相談することができます。また私の研究室では、学生諸君には企業との共同プロジェクトに必ず参加してもらうので、社会人の視点も養えます。

最後に、新しい発見をする秘訣をお教えしましょう。ときどき研究対象をから離れて全体を見渡したり、斜めから眺めたり、視点を変えてみることです。機械との向き合い方は、案外、人とのつきあい方と似ているのです。バランス良くものごとを見る目を養ってください。