研究室コラム

くらし+きかい=環境創成

大空を見上げるように、
地下の世界ものぞいてみよう。
大地の下の可能性が見えてきます。

大学院 工学研究科 機械機能創成専攻
工学博士 教授 橋田 俊之

宇宙よりも謎めく「地下」

私たちは日々、空を見上げて天気をうかがったり、気分がいい日には宇宙の彼方まで思いを馳せたりします。それにひきかえ、自分が立っている地面の下、地下を思うことは、ほとんどないと思います。宇宙は多くの研究者によって活発に解明が進められ、はるか彼方の空間でも調査が行われています。一方、地下に関しては、世界的に見れば井戸を掘って天然ガスや石油を取り出してはいますが、数km深さの場所でも未だによくわかっていないのが現実です。

それでも、地下は地球環境を維持する上で活用すべき、いえ、活用しなければならない空間であると私は思っています。それは石油、天然ガス、私の研究テーマである地熱といったエネルギーがある場所だから。そして、地下にCO₂を戻すことで温暖化対策を図ったり、CO₂を有用物質へ変換させることもできるからです。エネルギーや資源を取り出し、物質を蓄える、あるいは変換する空間として活用すべきものとして注目されているのが、地下空間なのです。

また、自然を相手にして得られた研究成果を、燃料電池の信頼性向上のための研究や複合材料の開発研究などに役立てています。

自然に工学的観点でアプローチ

私たちの研究課題は2つ。1つは地熱エネルギーの抽出です。地熱の抽出量の増大を図るために、地下の岩盤中に人工的な水の通路を広げる方法を探っています。地震を起こさないことを大前提に、水圧破砕という方法を用いて岩盤を割り、水や熱の通り道を広げるのですが、そのときに岩盤がどのように割れるのかを調べるために、私たちの専門である「材料の強度に関する知見」を生かしているわけです。私たちのように岩石を材料として、機械工学的な観点からコントロールしようというアプローチは、世界的にも珍しいのではないかと思います。

もう1つは、CO₂の地中貯留です。温暖化対策として有効なのはもちろんですが、地下でできることはそれだけではありません。地下には岩石と水があり、バクテリアもいます。CO₂がそれらと相互作用し、地熱によって化学反応が促進され、有用資源として展開することができれば、「循環型」の地下貯留が可能になるのです。ロマンあふれる宇宙に憧れることも素敵なことですが、時々は、きみが立っている地表の下にも、思いを馳せてみてください。宇宙よりは近い場所にある地下の研究を、いま、地面を見つめてくれたきみと一緒にできたらうれしいです。