研究室コラム

くらし+きかい=未来を知る

遠くても、危険でも、
宇宙探査ロボットは
果敢に前進するのです。

大学院 工学研究科 航空宇宙工学専攻
極限ロボティクス国際研究センター センター長
工学博士 教授 吉田 和哉

小惑星「イトカワ」にタッチ!

宇宙を旅して、未知の世界を探索する…考えただけでワクワクする話です。そんな“人類永遠の夢”を人間に代わってかなえてくれるのが、宇宙探査ロボット。私の研究室では、探査に必要な技術開発を行っています。

まず、その成果が生かされた例をお話ししましょう。それは小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクト。小惑星「イトカワ」の表面にタッチして岩石の破片を採取、3度の危機的状況を乗り越えて2010年に地球に帰還した、あの「はやぶさ」です。

私が関わったのは岩石の破片を採取するミッション。なぜそんなことが必要なのかといえば、小惑星は惑星が誕生するころの記録をとどめている“化石”のようなものなので、その成分を分析することで、惑星をつくるもととなった材料がどんなものなのか、また惑星はどのようにして誕生したのかを知る手がかりを得るためです。かくして「はやぶさ」は、搭載していたカプセルにたくさんのミクロン単位の粒子を収め、地球に持ち帰りました。そのカプセルのフタを最初に開け、粒子の分析を行っているのが本学理学研究科の中村智樹先生です。

一つの大学で複数の先生が「はやぶさ」のような最先端のビッグプロジェクトに参加している。それも東北大ならではの魅力ではないかと思います。

社会を支える宇宙探査技術

「それは先生たちだけの話でしょう」と思いこまないでくださいね。うちの研究室の学生たちがつくった超小型衛星(50cm角、重さ50kg)が2009年と2014年に打ち上げられ、世界トップクラスの成果をあげています。さらに小さいキューブサット(10cm角)なら、打ち上げの機会さえあれば君が大学院在学中に製作し、打ち上げから軌道上運用まで体験することも可能です。この他、学生を主体にして月や火星の表面を探査するロボットの研究開発も行っていて、求められた時にはいつでも応えられるよう、技術開発に務めているのです。

実は東北大学は全国的にもロボット系の研究者が多く、機械系だけで9つの研究室があります。研究テーマは介護支援やレスキュー、人の体の中で働くロボットなど様々ですが、2011年の東日本大震災による福島の原発事故現場では、本学の田所諭先生や千葉工大のグループとともに共同開発した探査ロボット「Quince(クインス)」が、強い放射線の中で活動しました。宇宙探査の技術も夢をかなえるだけでなく、人の手が届かない微小な世界や危険で近づけない場所で応用され、社会の役に立っているのです。