研究室コラム

くらし+きかい=よりよいものを見つける

コンピュータ
シミュレーションは
仕事か?遊びか?

大学院 情報科学研究科 情報基礎科学専攻
工学博士 教授 山本 悟

『数学を勉強した甲斐』がある!

たとえ得意であっても、そうでなくても、小学校からずっと勉強してきた算数や数学。その途中で「こんなに勉強して、いったい世の中のどこでどのように役立つのだろう」と思ったことはありませんか。そんな疑問に対するひとつの答えが、私たちの研究室にあります。

それは数値計算、わかりやすくいうとコンピュータシミュレーションです。そう、きみが夢中になった(かもしれない)あのアクションゲームもシミュレーションゲームも、数値計算のかたまりのようなものです。

私は特にシミュレーションゲームは、適度に楽しむことでバランス感覚のある思考が養えるので、とてもよいものだと思っています。一方、私たちが研究の対象としているコンピュータシミュレーションは、自然科学や社会科学といったさまざまな現象や事象を数学的手法を用いてモデル化する、すなわち数理モデルを構築する学問で、“世の中に役立つものづくり”を支えています。

シンプルで、魅力的

その一例を紹介すると、「環境エネルギー問題の解決」があげられます。発電には原子力、火力、太陽光、風力、水力、地熱といった方法がありますが、太陽光発電以外は、タービンの中で翼が回転することで電気を起こしています。私たちは、この発電の要となる部分の空気や水蒸気の流れをコンピュータでシミュレーションして、より効率のよいものをつくろうとしているわけです。このとき、実際に実験装置をつくろうとしても、翼の回転スピードが速すぎたり、人間が実験するなど、危険だし手間がかかります。規模が大きくて複雑な実験になるとコストがかさむ、目に見えない小さな世界で実験が難しいといった場合にも、コンピュータシミュレーションの優位性が発揮できるわけです。

数値計算は、これまで一生懸命に勉強してきた数学の知識を世の中に生かす、たいへん有効な手段です。しかも実際に計算するのはスーパーコンピュータで、その中で行われていることといえば、0から9までの数字を足したり引いたり。とてもシンプルです。恐れるに足りません。

ゴールにたどり着いた達成感、次のステップに進みたいと思う興味は、まさにゲームのようにきみの好奇心を刺激するはずです。そして何より、「研究は仕事?それとも遊び?」と聞かれれば、「その中間!」と私は答えたいと思います。それほど魅力的なものなのです。