研究室コラム

くらし+きかい=宇宙旅行

外国に行くように、
宇宙に飛ぼう!カギは
”エンジン”がにぎっています。

大学院 工学研究科 航空宇宙工学専攻
工学博士 教授 升谷 五郎

※升谷教授は2013年3月をもちまして退官いたしました。

ジェットエンジンのその先へ

いま、飛行機に乗るからといって特別な訓練を受ける人がいないように、将来、スペースプレーン(宇宙往還機)も気軽に利用できる乗り物になることを理想として、私の研究室では、エンジンの研究をしています。

まず翼の話から。スペースシャトルには翼がありますが、実は地球に戻るときだけに使うものなんですね。そこでスペースプレーンは、宇宙へ飛び立つときから翼を使おうと考えています。しかし翼はとても重たい。そこで別の所で負担を軽くしようということで、空気がある空間では、その空気の酸素を使って飛ぶことを考えました。実はロケットの機体には、燃料の他に酸素も積んでおり、その重さは何と最初の重さの60〜70%ほど。宇宙には空気がないので、積んでいくのは当然のことですが、空気のあるところは酸素を吸い込んで使い、積荷を少しでも軽くしようと思ったわけです。さらに人工衛星のように飛ぶためには、ものすごいスピードを出さなければならないのですが、ジェットエンジンでは力が及びません。そこで「極超音速空気吸い込みエンジン」という、ものすごく速いスピードで飛べるジェットエンジンの開発・研究を行っています。

研究の先端を広げるのは君だ!


スペースプレーンの構造図
(エンジン側面取り外し状態)

いつの日かスペースプレーンが実用化された暁には、外国旅行に行くような感覚で地球と宇宙を行ったり来たりできるようになるでしょう。そして「超音速の流れ場」の状態を、正確に測定できる技術が向上しているはずです。その日を夢見ながら、大学院の学生たちは、衝撃波がうずまき、点火装置であるプラズマトーチが火花を散らすエンジンと向き合い、その中で起こっていることを、今日もレーザーを使って実験的に調べたり、コンピュータでシミュレーションしてみたりと、研究に余念がありません。

私自身、ずっと飛行機が好きでした。この分野に興味があるなら、その思いと飛行機に関わっていたいという気持ちを持ち続けてください。そして勉強することです。「やっぱり…」なんていわないでくださいね!興味のあることと、その周辺のことを学ぶ日々は、高校とはきっと違うはずです。そして東北大学は、世界の人たちと一緒に研究の先端を広げていくところですから、きっと面白いと思いますよ。一生のうちに勉強に専念する時間を持つことはすばらしいこと…それを実感できるのは、社会に出てからかも知れませんね(笑)。