研究室コラム

くらし+きかい=便利が身近に

スーパーコンピュータの進化は、
20年後、30年後の
便利や快適も創造するのです。

大学院 情報科学研究科 情報基礎科学専攻 高性能計算論講座
サイバーサイエンスセンター
スーパーコンピューティング研究部
博士(情報科学) 教授 滝沢 寛之

楽しさの陰に課題あり

きみの手の中にあるスマートフォン。「それ、30年前のスーパーコンピュータ(以下、スパコン)と同じ性能を持っているんだよ」といわれたら、きみは驚くでしょうか。20年から30年前、スパコン用に考えられた技術やコンセプトは、いま、スマホやパソコンで当たり前のように使われています。この進化の歴史を目の当たりにしながら、私は「スパコンに何ができるか」を日夜、考えています。それは「20年後、30年後に、私たちが手元で何ができるようになっているのか」を考えることだと思っています。未来の暮らしをイメージする。それはとてもワクワクする研究です。

しかし、楽しさの陰には解決すべき課題もあります。例えば、スパコンの性能をさらに高めるためには大規模化と複雑化を避けることができず、部品の数と種類がどんどん増え続けています。そして、それらを正確に動かすための指示(プログラム)も大変複雑になっていて、人間には扱いきれなくなっているのです。そこで私たちは、機械学習やAIを用いて、その課題を解決しようとしています。実は、スパコンの性能を使いこなすためには人間の職人的経験や勘が必要な部分が存在するのですが、その部分も機械学習やAIを使うことで何とかコンピュータにやってもらえるように、頑張っているところです。できるだけ自動化を進めて、人間は人間にしかできないことに集中できるしくみをつくろうとしている。それがいま、取り組んでいるテーマの一つです。

知の境界線を動かせ!

私とコンピュータとの出会いは「ファミコン」でした。徐々に「コンピュータは、周りの人より得意かも」と思うようになり、その気持ちに素直に従って進んだところに東北大学工学部がありました。ここで学ぶうちに、大学で行う学術的研究は、教科書に「わかったこと」を追加したり、教科書の内容を書き換えたりすることだと考えるようになりました。大学での学びは、わかっていることと、わからないことの境界線がどこにあるのかを知ること。研究は、少しでも「わかっていること」の領域を増やすことです。それを私はスパコンの分野でやっていきたいと思っています。そして「わかったこと」を少しでも多く社会に役立てたい。そう、いつも思っています。